ココロが軽くなるメンタルケア:会社に自分が必要とされていない気がする

一般社団法人認知行動療法研修開発センター 理事長 大野 裕
53歳の会社員男性です。打ち込む趣味もなく、これまで仕事一筋で働いてまいりました。休日出勤や終電帰りも苦ではなく、来る仕事は拒まずで、周りの人間より忙しいほど、やりがいを感じられていました。ところが先日、体調を崩して一週間ほど仕事を休んだときのこと。私がいなくても会社が普通に回っていたことで、自分の存在価値はそれほどでもなかったと気付かされました。
それからというもの、どこか仕事に虚しさを感じるようになり、スイッチが切れたように気力が湧かなくなってしまいました。休日はたまった疲れで起き上がれず、以前のように長時間労働をした翌日は体が重くて出社さえ億劫に感じてしまいます。このままでは先が不安です。どうしたらよいのでしょうか。

会社はみんなで回っている
仕事を休んでも会社が普通に回っているのを目にすると、たしかに虚しい気持ちになりますね。自分なんかいなくてもよいのではないか、という思いにもなるでしょう。これは退職後の空虚感と共通した心理だと思います。
でも、落ち着いて考えてみてください。ある社員が何かの理由で働けなくなったときに仕事が止まってしまうようだと、会社としては大変です。ですから、しっかりした組織では、立場にかかわらず、ある人が休んだとしても、辞めたとしても、支障が起きないようにいくつもの対応策を用意しているはずです。ですから、自分が休んでも会社が回っているのは当然です。
あなたの人生の中心はあなた
そこで、あなた中心に視点を変えてみてはどうでしょうか。ここまで書いてきたことは、会社が動くかどうかという会社目線の考え方ですが、あなた中心に視点を変えてみるのです。そもそもあなたは、何のためにこれまで仕事をしてきたのでしょうか。

仕事の社会的意味を感じていたからかもしれません。自分が好きなことだったり、収入につながったりしたからかもしれません。同僚と力を合わせて課題に取り組むのが楽しかったり、上司や周りの人から仕事ぶりを認められるのが嬉しかったりしたからかもしれません。
このような自分にとっての意味を考えてみて、それを意識して生活するようにしていけば、先に進んでいく方向性が見えてきます。ご質問者の方は、年齢的にも、定年を迎える時期が近づいています。これを機会に、自分のこれまでの生き方を振り返り、自分にとって大切なものを意識できるようになれば、定年後の生き方の方向性が見えてきます。そうすれば、まだ長いこれから先の人生を自分らしく生きていけるようになるはずです。
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